「Torinoといえば…。Part 2」
これまでのトリノは、有り体に言えば渋くて通好みのクルマが 安く買える蚤の市だったが、これも昨今のマーケット変動の波をモロに受けて、随分と勝手が違った。
具体的には3割は値段がアップした車両本体がその最たる例。
また、人気車両に関連するアクセサリーやマニュアルなどの高騰っぷりが目立つのはパリと同様。
もう一つ残念だったのは、人気車両にあげつらわれた物件が、事前に取引されるからか、ほとんど市場に出てきていなかったのだ。
それでも、多少はあまりお目にかからないクルマがあるのでご紹介したい。
「Dino 208GT4」1974
2リッターNA、マウロ・フォルギエーリ技師の手になる、あのV8ショートストローク版を搭載したイタリア国内における「節税対策」モデル。
当時のイタリアは、大排気量車に対して贅沢税ともいえるほどの恐ろしい課税率が課せられていたので、極僅かではあるが、こうしたイタリア国内専用ともいえるモデルが生産された。
ちなみに、二割ほどショート化されたエンジンはファイナルも異なるトランスミッションとの組み合わせで、運転そのものはしっかりと楽しめるばかりか、車輌としてのバランスは大人気のピニンファリーナの手になる208/308GTBシリーズよりも良く、「その筋」では優れたハンドリングマシンとして定評がある。非常に優れたGTでもあり、デートカーの極みでもある。圧倒的な前面視野の広さと運転のしやすさは、長きにわたって楽しむに相応しいもの。また、「写真うつりの悪いクルマ」としても有名で、実際に見るのと写真でみるのとは大違い。プラス2のシートといい、居住空間の確保の仕方など、現実的に乗るのに適した相当に完成されたベルトーネの傑作といえる。
ちなみに値段が付いていなかったのでオーナーに聞くと、まあ、35,000ユーロかなあとのこと。ちなみに昨年あたりより3割は高い…。
もちろんオリジナルコンディション。マニュアルから工具からすべてが揃う、実にトリノらしい一品だった。
「FIAT 131 Supermirafioli Volumetrico ABARTH」1981
おそらく200台くらいしか作られていないのではないだろうか? これぞゲキシブ、羊の皮を被った狼である。
フィアット131といえば131アバルトや日本でも販売されたRacingが有名であるが、これはオリジナルのピニンファリーナによる4枚ドアボディと、地味な角目を持っている正真正銘のファミリーセダン。スーペルミラフィオーリタイプ。
どこから見てもただのファミリーセダンで、ご丁寧に右のバックミラーもないバージョン。言ってみれば、ランチア・デルタS4と同じランプレディ設計の4気筒エンジンにスーパーチャージャーがついたサルーンだ。もちろんそのチューンは異なるが、前にちらりと見えるアルファ75くらいでは全く歯がたたない速さを誇る。リアにひっそりと貼られたアバルトのサソリマークのみの主張がニクイ。
こちらも内外装ともに素晴らしいレベルの一台だったが、お値段は18000もした。それこそ1万以下のクルマだったのに…。
とまあ、それでも日本ではあまり見かけないクルマがボロボロと売られているという意味では、まだまだ魅力的かもしれないが、やはり今はちょっと異常なマーケットになっている。3月末にはミラノ、4月には規模では世界一のマーケットがドイツで開かれる。できればこちらにも顔を出してみたい。
それではまた近々。