Vol.084 いじる楽しみを知る

icsunonove01買う前に勉強すべきだったのだろうが、購入前に少しだけ引っかかっていた「ニキのX1/9との違い」について真剣に考えるようになってきていた。もちろんハンドリングはピカイチだったのだが、いくら1500のシングルカムとはいえ、実にトロかった。とにかく遅かった。最高速こそ、じっくり待てばそれなりの速度が出たが、スポーツカー然としたその姿からはまったくもって期待はずれの俊足ぶりだった。

CGをはじめいろんな本を読んでも、まあ、そんなに悪いことは書かれていないX1/9がヨーロッパ仕様と日本に入っていた北米仕様では見た目もエンジン性能も全く違うということに、ほどなく気づいたのだ。少なくともわたしの美的センスには初期の1300の方がかっこよく見えたし、10%も排気量が少ないのに、欧州仕様のオリジナルが馬力が上ってどういうこと?と疑問をもつようになった。

 

 

そう、私のエックスワンナインは、いよいよ「チューンアップ」の世界に足を踏み入れることになるだった。

 

当時、現行品で買えたイタ車は、フェラーリなら328。テスタロッサ。マセラティは大ブームになったビトゥルボシリーズ。アルファ・ロメオはスパイダーと75。ランチアはデルタ・プリズマ&テーマ。フィアットはウーノにリトモアバルト130TC。そして大人気のアウトビアンキA112アバルトなどであった。

 

 

 

icsunonove09そんなクルマたちが新車中古と売っている場所では、まだまだX1/9の純正エアクリーナーくらいは買うことができたので、はじめて足を運んだときのことだった。

「X1/9の1500のエアクリーナーエレメントくださいなー」

 

 

「はいはい、あー、純正なんだ…。」

 

 

 

icsunonove12ちょっとカチンと来た。目に入ったのは店内にある変なお弁当箱のようなエアクリーナー。どうにもわざとらしいサソリのマークが入っている。

 

 

 

その時はじめて、エアポンプやEGR関連のパーツをはずし、ゆくゆくはキャブやカムシャフトやピストンを換えれば、エックスワンナインも結構走るよという情報を掴んだのだった。当時はネットもない。そう簡単にマイナー車種の改造情報などは手に入らない。そんな時代だ。週末に「諸先輩方が集まる場所」ではまさに目からウロコが落ちた。

 

 

 

 

 

そこからは、とにかく四方手をつくしてチューンに詳しいショップを探し、通うようにした。バイトもした。

 

 

 

それにあわせるように、クルマも私に試練を与えてくれた。

ガソリンタンクに砂が入るとフィルターがつまり、キャブにガソリンが行かないとか、砂がキャブのジェットに詰まって具合が悪くなるとか、ショックが抜けるとあーだこーだ、キャブの口径を大きくしたって、他がそれに応じていなければまったく金の無駄だとか、良い工具じゃないと重整備で大怪我をするとか…。

とにかく、いろんなことを学んだ。
遅い車を早くするためにいろんな学術書や技術関連の本を読み、ショップに出向きメカのオッサンに怒られ、お金持ちのオーナーさんから色んな情報や聞いたり学んだりした。殆どの整備を自分でこなせるようにはなっていた。

しかし、楽しい時間あっという間だ。次なる試練が私を襲う…。

 

つづく

 

A prestissimo!!