Vol.031 プロの仕事

genova01みなさんは「母をたずねて三千里」をご存知だろうか?

今から40年近く前、1976年の1月からスタートした日本のアニメーションである。

 

ほぼすべてのイタリア人が日本のアニメの虜になっていたということは、以前ここでもご紹介したと思う。
今回はイタリア人が主人公の日本のアニメについて少々。

原作はエドモンド・デ・アミーチスによる「Cuore」。あまりにも有名なタイトルソングは40代50代の方々にはなつかしいものだと思う。
実は私、勝手にアルゼンチンを舞台にしたアルゼンチン人の話だろうと思い込み、そのタイトルの女々しい響きから「食わず嫌い」を決め込んで全く見る機会を逸していたのだ。

もちろんそれは間違いで、主人公マルコとその家族はイタリアの港町ジェノア(ジェノヴァ)に住んでいる。
そこからワケありで出稼ぎに出たお母さんにトラブルが生じ、身を案じたマルコがアルゼンチンまで単身乗り込む(そこにもかなりワケあり)という話。
しかも、視点はマルコではなく、ややドキュメンタリータッチの話なのだ。

 

 

 

 

 

 

buenos-aires場面設定やレイアウトは今や大巨匠、宮﨑駿。監督はルパン三世などで名パートナーを務めた高畑勲。そしてコンテは「機動戦士ガンダム」などで後に名を馳せる富野由悠季(当時は富野喜幸)という、現在の日本のアニメ界の屋台骨ともいえる大物総動員の作品。

なぜこの作品をわざわざ取り上げる気になったかというと、圧倒的な精度で描かれている舞台背景やジェノア人の県民性、そしてイタリア人の人間性に大変驚いたからだ。これほどの取材がなされているとは…。

 

 

 

 

 

©日本アニメーション、フジテレビ 別所孝治
©日本アニメーション、フジテレビ 別所孝治

主人公の母親が送る手紙の文章から、部屋の中の暗さ。ガラス瓶の風合い、シャツの折り曲げ加減やジェノアという地域独特の県民性など。枚挙にいとまがない恐るべき作り込みなのだ。
これを毎週放映していたのかと思うと、思わずどれほどの精力を傾けたのかを考えてしまい、思わず気分が悪くなってしまう。これぞプロの仕事である。

見た目の部分が丁寧なのはわかりやすいが、全体としてのストーリー構成、お涙頂戴ではない感動の場面が盛りだくさん。

 

 

 

 

 

 

 

実際、イタリア人が見たらおそらく数日はダウンしちゃうと思う。
ちなみに友人の伯爵は、子供の頃見た「ベルばら」で主人公の幼なじみが死んでしまうシーンの後、2日も涙に暮れ、学校にも行けなかったという…。

イタリア好きの方は是非ともご覧になることをお勧めしたい。大人が見ても十分鑑賞に耐えるクオリティとすばらしいストーリーは「男はつらいよ」的な渋みすらある。人生は山あり谷ありなのだ。

それではまた近々

 

 

A prestissimo!!