不世出の天才
ジョルジェット・ジウジアーロが引退する。
縁あって、つい数カ月前にジウジアーロとともにイタルデザインを創設した日本人、宮川さんとお会いしていた。
また、なんの偶然か今年に入ってから友人にジウジアーロのデザインしたパンダを勧め、私もやはり偶然デルタを購入した。何かの偶然にしてはすごいタイミングではないか?
思えばSEIKOの腕時計、SONYの会員向け通販サービスでのみ販売されたCDラジカセ、セレンビリティにはじまり、ニコンのカメラ、自動車ではアルファロメオ・アルファスッド、フィアット・パンダ、ランチア・プリズマにデルタ、そしてテーマと、いちデザイナーの作品にしてはそれなりの数を保有していた方だろう。
とりたてて彼のファンを意識していたわけではないのだが、それでも非常にバランスのとれたデザインにいつの間にか惹かれていたのだろう。気づくと手元にあるという塩梅だった。
本来、私ごときがジウジアーロを語るべくもないのだが、それでも自腹でそれなりの数を買ったことを考えると、それなりに語る権利はありそうだ。
とにかく、シャープでキレのあるデザインでありながら、どこか優しいというバランスが彼の作品の特徴。そのテイストは最近のヒット作、グランデプントなどにも存分に発揮されていると思う。
しかし、彼をはじめキラ星のようなスターデザイナーたちが活躍した、スーパーカー時代には少々地味な印象があったことも否めない。
事実マセラティ・ボーラやギブリは、カウンタックやミウラに比べて何かこうあっさりしている感じがあり、多くの子供達のハートを鷲掴みというレベルにはなかったと思う。
このブーメランを実際に見て思ったのだが、まったくもって「すみません」のヒトコトしか思い浮かばなかったことを白状しよう。
そう、完全に「わかってない」の典型だったのだ…。(まあ、当時はそんなに写真もなかったし、特にコンセプトカーなど目の当たりにするチャンスなどもなく、それこそある種のUFOに近いような存在だったと言い訳したい)
一見直線で構成されているようにみえる造形は、実はハリのある曲線によって醸しだされている。とにかく私ごときの写真の技術でお伝えできるようなニュアンスではないのだ。
御年76歳。
隠居には十分な年齢で、よくぞここまで頑張りなすった!というのが正直なところ。どうか、ゆっくりと余生を過ごしてほしい。
それにしても、彼が現役の時代にクルマを買えてよかった。
そう簡単には彼のような天才が生まれるとは思わないが、それでも次代のジョルジェットがまた現れることを切に期待したい。
それではまた近々。
A Prestissimo!!