イタリアよもやま話〜Bollito Misto vol.52

      イタリア好きが嵩じてついにはフィレンツェに移住までしてしまったCollezioneイタリア特派員Noriによる、「イタリアよもやま話」。

 

      ちなみに「Bollito Misto」とはいわば「ごった煮」のこと。

 

      自動車、自転車、食事にワインやサッカーはもちろん、たまには真面目な社会的な?お話を勝手気ままにお届けします。

 

 

 

 

 

 

 

すっかり秋だ。
暑いさなかには「早く終われ」と思うものの、過ぎてしまえばちょっと寂しい。
夏とは何とも不思議なものだ。
まあ、おセンチになる柄でもないので、要は随分と涼しかった。もっと夏を満喫すれば良かったと後悔しているだけである。

 

夏のバカンスシーズンも終わると、F1もまた動き出す。ベルギーのスパからモンツァへと、そしてあっという間に鈴鹿である。

 

 

 

ここしばらく、F1の人気凋落が取りざたされて久しいが、不恰好なマシンや、乗用車のようなエグゾーストノートよりも深刻な人気下降要素が、TVの放映権である。 と言うのも、イタリアでは、サッカーとF1はある意味日曜の王様コンテンツな訳だが、それが近年CSによる有料放送になってしまったのである。不景気の話は、ここで何度もしているので、好況に向かった時に改めてじっくり話すとして、そんな訳だからサッカーもF1も観る人が激減している。というか、観たくても観られないのだ。

 

 

 

 

クルマに非常に関心の高いイタリア人だからF1は必ずお金を払ってでも見る!
わけなど当然なく、正直ここまでF1が彼の国で人気があったのはフェラーリと、娯楽の圧倒的な少なさが原因だと思っている。
それにしても週明けにレース談義で盛り上がれないのは、ここ数年の最大のストレスだ。

 

 

 

 

考えても見てほしい、
「昨日のレース見た?」
「ううん。おれんちSKY入ってないから…。」
「あ、ごめん…。」

バールでのこんなコミュニケーションなんて、もうゴメンなのだ。

 

しかし、ちょうどそんなことを書いているうちに、驚くべきニュースが飛び込んできた。
なんと、欧州社交界の人気者にして、イタリア経済界のアイドル。そしてフェラーリの会長、ルカ・ディ・モンテゼーモロが辞任したというではないか!

 

 

25歳でフェラーリF1の監督。40歳でイタリアサッカーワールドカップ、そして記憶に新しい2002年のトリノ五輪など、イタリアのアイコンと言ってもいいほどの大物が、イタリアの自動車界の最前線から姿を消す。

 

 

 

 

 

 

 

 

表向きにはフェラーリの5年無冠のツケだとか、いろんなことが取り沙汰されているが、原因は現フィアット社長のマルキオンニとの確執だといわれている。
辞任会見にもどこぞのコンピューター会社の社長じゃあるまいし、そんな大事な場に、随分とカジュアルな出で立ちで現れたマルキオンニは、あからさまにこれまでのイタリアのスタイルを否定しているように映る。

 

 

 

 

 

イタリア人に限定とはいうものの、ランチアのブランドの売却を決めたり、クライスラーのシャシーに伝統的なランチアの名車の名前を、ヌケヌケとつけてみたり、本当に個人的に癪に障るアメリカニッザート(アメリカかぶれの意味)と言わざるをえない。
そう、私はランチスタなのだ。本当に悲しいのだ。

 

 

 

 

自動車産業は多くの場合その国の基幹産業ともいえる巨大産業。そこは血で血を洗うビジネスの世界ということもわからんではない。
しかしながら、自動車の本質は、言ってみれば動きさえすればOKなものであるからして、ちょっとカッコいいクルマや速いクルマを欲しがる向きというのは、言ってみればそのコダワリや情熱にお金を出していると言っても過言ではない。
ああ、イタリアよ、FIATよ。どこにいっちゃうんでしょうねえ…。
しばらく目が離せない。

 

それではまた近々

A prestissimo!