イタリアよもやま話〜Bollito Misto vol.27

      イタリア好きが嵩じてついにはフィレンツェに移住までしてしまったCollezioneイタリア特派員Noriによる、「イタリアよもやま話」。

 

      ちなみに「Bollito Misto」とはいわば「ごった煮」のこと。

 

      自動車、自転車、食事にワインやサッカーはもちろん、たまには真面目な社会的な?お話を勝手気ままにお届けします。

 

 

 

 

 

 

 

イタ車はタイミングベルトが弱い…。
90年代以前のイタリア車オーナーなら、耳にタコが出来るほど聞いた言葉だろう。
タイミングベルトとはなにか?
お詳しい方々には説明は不要であろうが、一応説明したい。
季節ネタになるが「餅つき」を想像して欲しい。
杵を打つ人と、水を加えモチをこねる役の人のタイミングを司っている存在こそがタイミングベルトなのだ。
つまり、これが切れたりすると杵(ピストン)でこね役の手(バルブ)を叩き潰してしまうというわけだ。考えるだけでも身の毛がよだつ話だ。

 

 

 

日本では古くから、フィアット・パンダ、アルファロメオ155、ランチア・デルタ…。枚挙にいとまがないほどの名車たちがこの言葉に脅かされてきた。(多くはフィアットのユニットなわけだが…。)
実際のところ、本国ではどうだったのだろう?
果たして、当時イタリアの路上で多くの「タイミングベルト切断」があふれていたのだろうか?

 

 

 

 

あまり語られることのないこのトラブルの元凶は、実は非常に簡単なドライビングテクニックに起因していることを、日本のラテン車ユーザーは余り知らないようだ。
考えてもみて欲しい。曲がりなりにも大衆車づくりの大先輩、イタリアのお歴々がつくるエンジンに、そんなお粗末なトラブルがつきもののワケがない。

 

事実、多くの名車に載せられたFIAT製4気筒ツインカム、通称ランプレディ・ユニットは60年代後半からベルト方式を採用している。もちろんDTMやWRCなどで多くの勝利を収めている。
つまり、「普通に」使えば何もトラブルなど起き得ない構造なのだ。

 

 

 

 

さあ、その簡単なテクニックについて述べたい。
小型イタ車の1,2速のギアリングは基本かなりのローギアードである。
これは意外に多い山間部での利用も踏まえてのことだと思う。想像以上にオフロード的なシチュエーションが多いのでこれは仕方がないだろう。
もう一点は、やはり小排気利用低トルクに起因する部分も多々ある。現在のような高性能ターボやディーゼルのように低回転でもトルクが発生できるエンジンになれば、こうしたギアリングは必要ないだろうが、まあ、ともかく1速2速は大変ローであるケースが多い。

 

このギアリングのせいもあるが、ガーッと踏んで、一気にタコメーターの針が駆け上がる。実際のクルマよりも音が速いと言われる所以だ。あっという間にやってくるイエローゾーン。すかさずシフトアップ。次の2速も思いの外あっという間に吹け切る。
小排気量イタリアン操縦の醍醐味だ。

 

 

 

 

 

 

しかし、考えてもみて欲しい。たとえ現代の基準からするとずいぶんと低出力のエンジンであっても、日本の道路事情だと、その2速すら吹け切らせてくれないようなシチュエーションにあふれているばかりか、あっという間にブレーキが必要となる。
ここに都市伝説を紐解く大きなヒントが隠されている。

 

多くの「トラブル経験者」の運転方法はこうである。
ガーッと踏んで、パッとアクセルオフ。ガクガクしながらもブレーキで急減速。
これじゃあ、ベルトに負担がかかって当然だ。ある意味、「急エンブレ」をかけまくる行為を日々こなしていることになる。その重責を担っているのはピストンやクランクだけでなく、タイミングベルトも同様なのだ。

 

 

 

ではイタリアではどうなんだろう?
ガーッと踏むかどうかも、あらかじめ全体の交通の流れを把握しながら予測、状況を常に鑑みながらアクセルで車速をコントロールしつつ次の動作に備える。ブレーキなのか回避なのか…。
彼らのアクセルワークはことのほか慎重かつ丁寧なのだ。

 

日本でも「急」のつく動作は禁じられているが、意外なことに急アクセルオフという考えは存在しない。雨や雪などの低ミュー路でも、こうしたことは非常に重要なのに…。
それはともかく、イタ車に乗る以上、特にストップ・アンド・ゴーが続く環境下では極力丁寧なアクセルワークに集中すべきだ。これだけで最悪の結果はほぼ回避できるばかりか、愛車と懐にかなり優しいのは事実だ。

 

 

 

アクセルとは単なる加速装置ではなく、速度調整装置でもあり、トラクションコントロール装置でもあるという基本事実を日本人はないがしろにしているようだ。

 

 

クルマの醍醐味、イタ車の醍醐味はアンダー・コントロールにこそある。
人馬一体を実現できてはじめて最高の性能が出せる仕組みなのだ。
こうした事を意図したのかどうかは分からないが、こうしたテクニックはいわゆるスーパーカーやハイパフォーマンスカーに乗っても活きてくるから面白い。
是非その楽しさを実感していただきたい!

 

 

それではまた近々

A prestissimo!