イタリアよもやま話〜Bollito Misto vol.26

      イタリア好きが嵩じてついにはフィレンツェに移住までしてしまったCollezioneイタリア特派員Noriによる、「イタリアよもやま話」。

 

      ちなみに「Bollito Misto」とはいわば「ごった煮」のこと。

 

      自動車、自転車、食事にワインやサッカーはもちろん、たまには真面目な社会的な?お話を勝手気ままにお届けします。

 

 

 

 

 

 

 

2014年、サッカー・ワールドカップの出場国が出揃い、つい先だって本戦組み合わせも発表された。
サッカーに興味のない人も、さすがに世界規模のお祭りとあって、多少ならずとも興味をそそられるのがこの祭典だろう。

 

 

 

今回の開催国はブラジル。これまで唯一の5度の優勝を誇る、文字通りのサッカー大国である。サッカーにまつわる歌も多い彼の国では、当たり前だろうが、必要以上にサッカーにウルサくシビアだ。

 

イタリアにも結構な数のブラジル移民がいるのだが、彼らはことサッカーになるとちょっと一筋縄でいかない。

 

 
たとえば、今年行われたワールドカップの前哨戦、コンフェデレーションズカップに日本代表もアジア代表として参加していたが、結果は残念なことに全敗だった。

 

イタリアもこの大会には出場していたのだが、イタリア人はこうした「親善試合」にあまり興味がない。

むしろ実験の場として割り切っていることが多く、国際Aマッチ指定のものでも、親善試合というだけで、勝敗にはこだわらないし、ほとんどの人が見もしない。むしろ、事後の戦術検証番組の方が楽しみなくらいだ。
あくまで、タイトルマッチに向けてのスパーリングであるという考え方が末端まで行き届いている。

 

 

たくさんのスポンサーが付き、多くの人びとが一喜一憂する我が国とはずいぶんと体温の違いを感じるのだが、それはやはりワールドカップ4回の優勝を誇る、世界第二位のサッカー大国たる余裕なんだろう。

 

しかし、一方で第一位のブラジルの方々は結構容赦無い。
コンフェデレーションズカップ後のことなのだが、複数のブラジル人の知り合い(女性含む)に「やーい、やーい、ボロ負けの恥っかき!」くらいの手厳しいお言葉をいただいたりするのだ。
イタリアの場合は特にこうした親善試合については、むしろ勝ち負けよりも中身について批評をしてくれるのだが、ブラジル人の場合、どんなに小さな勝負でも酔いしれ、負ければ相当に悔しがる。だから弱者にして「当然の敗者」である我々日本にも容赦がないのだ。

それでいて、「我々の特技がサッカーだけと思われるのが癪だから、本当は他のスポーツでもどんどん活躍して欲しいんだよね〜」とは十分に腹立たしいリア充発言に思えるのだが…。

 

ちなみに、彼の国で「フッチボウ・ジャッポネース(日本人のサッカー)」というと、「サッカーが下手な人間」を意味する侮蔑の言葉として有名である。

 

だから、唯一の公式戦対日本敗戦である、今や昔の「マイアミの奇跡」など、なかったコトにしたいくらいの黒歴史なのかもしれない。

 

 

さて、我らが日本は、絶対的強者のいない組に入ったという意味ではラッキーかもしれないが、現実的には全くもって厳しいワールドカップらしい闘いを強いられることは間違いない。
唯一の救いは監督力(近代サッカーにおいては、正直監督の良し悪しで勝敗が決る。これは短期決戦になればなおのことである)で一歩抜きん出ていることに他ならないだろう。
それほどザッケローニの経験は大舞台でこそ発揮されるはずだ。世界を極めた男は伊達じゃない。

 

少なくとも、イングランド、ウルグアイという不当に厳しい組に配されたイタリアよりはグループリーグ突破に可能性があるかも知れない。
ただ、イタリア人は、こうした逆境から這い上がる姿を実は心の奥底で期待したりする。そのほうが勝利の価値も美酒もウマいことをよく知っているのだ。

 

 

 

その点、親善試合で一喜一憂する日本はウブだなあと思わざるを得ない。
が、まだまだ日本のサッカーは始まったばかり。
ともかく我が国の健闘を祈りつつ、こちらもハラハラ・ドキドキの後の勝利の美酒を楽しみたいものだ。

 

 

それではまた近々

A prestissimo!