イタリアよもやま話〜Bollito Misto vol.19

イタリア好きが嵩じてついにはフィレンツェに移住までしてしまったCollezioneイタリア特派員Noriによる、「イタリアよもやま話」。
ちなみに「Bollito Misto」とはいわば「ごった煮」のこと。
自動車、自転車、食事にワインやサッカーはもちろん、たまには真面目な社会的な?お話を勝手気ままにお届けします。

 

 

 

 

 

 

 

引き続きIAA(フランクフルトモーターショー)偏見リポートだ。
ちなみに前回のアルファ4Cだが、乗ると相当良さそうである。つい先日バロッコで試乗会があったようだが、概ね評判は上々。一日も早い上陸が待たれる。
さあて、今回はその他のイタリア車について、ごく私的な雑感を述べてみたいと思う。

 

 

 

一番人気のフェラーリは目玉がいくらスペシャル版とはいえ458だ。見た目にはそう目新しい物はない。それでもやっぱり大人気。
マゼラティはギブリ。時代を反映してかV6のガソリン&ディーゼルを用意。ちょっとレクサスっぽさがあるような気もしないでもないが、それでも売れるだろうなあ。日本で特に。
なーんて、この辺りのインプレッションは他のメディアでも散々出ているだろうから、是非そちらを参考にされたい。

 

 

 

さて、今回まな板に上げたいのは、FIAT500Lの新派生モデルである。
地味で申し訳ない。が、今の欧州の経済状況や世の中を考えると、実はこれ。意外といいのかもとおもった次第だ。

 

 

 

日本でも人気のチンクエチェント。イタリアはもちろん欧州全域、とにかく世界中で大成功を収めたレトロ調ハッチは、傾いたFIATの業績をも復活させてしまったのはみなさん御存知の通り。
そのドル箱カーの派生モデルなのだが、末尾のLは、想像通りサイズを意味しているのだが、顔が「何となく」500に似ている以外は、ウナギイヌ的というか、なんだか肥大してしまっていて、およそ派生というには無理がある感じがある。

 

 

贔屓目にも正直不格好系のデザインだと思う。
無理に500を名乗らず、いっそ600か750にでもしてくれれば良かったのではないかと思うほどだ。というのも、今やランチア・イプシロンも500ベースだが、Lはチンクエチェントの名を冠しているのにもかかわらず、実はプントベースという、ちょっと不思議チャンなクルマなのだ。
それでも500という名前にコダワリたかった彼らにはなにか理由があったのだろうか?

 

 

 

そのLがデビューしたのが昨年12年のジュネーブ。
当初は「誰がこんな不格好な…。」とか、「MINIクロスカントリーの二番煎じ」とかいろんなことが言われていた。ところが、これが割合好調なのだ。
60センチ近くも長い全長になり、ベビーカーをたたんでチャイルドシートで後席も使えるというスペーシング。抜群の燃費を誇るツインエアや、ディーゼルエンジンなど、市民の懐をギュッと掴んだ性能が幸いしたのか、ハッチの500以外は日本未発表のMPVのQUBOくらいしか目立たないFIATにして、そこそこ頑張っているというか、思いの外路上で多く目にする。
500だプントだの生い立ちや血筋はさておき、ユーザーにとってはともかく「一番小さなファミリーカー」という位置づけを保っている気さえする。

 

今回改めて着目したのは、デビューこそIAA前なのだが、四駆らしいアクティブさを強調したトレッキング(4×4モデル。アウトドア感たっぷり)と、Lよりもさらに大きなリビング(7シーター・ちょいリムジン)という派生モデルだ。

 

いずれも、ベタなほどのライフスタイル重視型のパッケージングだが、乗ってみると意外といい。そもそもいい意味で「適当」な「ごちゃまぜ」感があったこのクルマに、さらに新しい要素であるアウトドアやリムジン感が加わったのが奏功しているのだろうか? 細かな点のリファインもあって、通常のLよりもまとまった感がする。

 

こうなると、厳密にはノーマルのハッチがSサイズで、Lが通常ファミリーサイズ、そしてこの新モデルがワゴンに相当するような感じすらする。
ごく個人的にはリビングが気に入った。オリジナルに比べれば随分と大きな感じのする車体だが、それでも実は全長4350mmしかない。もちろん、中は十分ルーミーだ。オプションも豊富で、レザーシートなど勝手気ままにコーディネイト出来る感じがFIATよりも数段上のクォリティを感じさせる。

 

意地悪く言うとミニ的だし、DSの持つアヴァンギャルド感もある。つまりは本当に「ごった煮」だ。
でも、それが500だパンダだといったクルマたちをこなしてきたFIATの伝統がなせるのか、「いい感じ」にまとまってしまっているのだ。
外装色のセンス。インパネ周り、シート柄、チープだけど気の利いたフォールディングテーブルとか、なんかとにかく「いい感じ」なのだ。ご都合主義で引き伸ばしたりせり上げたボディも、ここまでくると堂に入っているというか、気にならないのだ。

 

 

 

 

とどのつまり、このクルマ、結構オシャレなのである。
使い方次第でレジャーにも活躍するだろうし、ジャケットでもスッキリ合うジーンズ的な手軽さがある。
それだけじゃない、実は見えないところでも頑張っていたりする。
そういう意味でも実にイタリア車だ。

 

 

 

それだけじゃない。高燃費高効率のガソリンエンジン「Twin Air」や、実は高性能ディーゼルの「MultiJet」そして、日本では縁遠い、がしかし、ハイブリッドなどよりはるかに低価格でかつ、勝るとも劣らない燃費を誇るメタンガス&ガソリンのハイブリッド版「Natural Power」を揃えるFIATの小兵軍団は、意外や意外、いい仕事をしているのだ。
ちなみにこの「Natural Power」エンジン。30ユーロ(日本の感覚で3000円)の燃料代でどこまで走るか?というテストで並み居る強豪200台以上を抑え、その頂点に立った経緯がある。
ドイツで最も権威のある厳しい厳しい燃費チェックテストでである。

 

 

 

ヤラない時は全然ヤラないが、やる時はやる。ラテン車はやはり侮れない。

 

 

それではまた近々

A prestissimo!